研究課題
本研究は、高齢者、下肢麻痺者を対象としたリハビリ機器に機能的電気刺激(FES)技術を総合的に取り込むことによって、効率的かつ効果的な全身運動を可能とするハイブリッド・パワーリハビリ機器の開発を行うものである。ローイング運動時の動作を計測してその運動学的データを用いたモデル計算により解析を行う為、生態運動系である人体のモデリングを行った。今回はリンクモデルを用いて各関節に働く関節間力及び関節モーメントを評価する。使用する力学モデルは2次元の4リンクモデル(足部、下腿部、大腿部、上体)とする。重力や加速度を考慮して各関節に作用する水平方向の力と鉛直方向の力とモーメントの釣り合いから動力学的に足関節、膝関節、股関節の関節モーメントを求めた。非侵襲で患者の負担が軽いと考えられる表面電極型の電気刺激発生装置(21100-BZZ-00188000、Minato Co.)を用いて、筋を外的に刺激・制御することで効果的なリハビリ機器を目指す。計測システムは、足部とハンドル部に荷重を計測するセンサを取り付けたローイングマシンと、CCDカメラの画像より標点の空間座標を追跡する画像処理装置を用いた。この計測システムにより人体にどのような負荷がかかるのかを検証した。足関節、膝関節、股関節の関節角度の変化を計測した。各関節ともスタート位置からゆっくりと角度が増加方向に変化し、再びスタート位置に戻っている。ローイング運動は下肢の各関節に対して滑らかな運動であることがわかった。本実験結果より、20ストローク/分のゆっくりした速さでのローイング運動は、高齢者には負担が少なく転倒の危険などがない安全な有酸素トレーニングを提供できる。本研究により、機能的電気刺激と併用するリハビリ機器の実用化の見通しを得た。本研究成果に基づき施設内で使用できるリハビリ機器の設計指針となる。
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