脳血管疾患により内反尖足等の変形が生じている人が足関節底背屈装置を使用しようとする場合に生じる問題を解決するため、足底板に内返し・外返し周りの受動的な自由度を与え、患者の苦痛を低減するとともに、足底板と足裏の接触面積を大きくして効率的に力を加えられる底背屈訓練装置について、個々の患者に最適な訓練を提供するためのパラメータ選定について更なる解明が必要である。 そこで本研究課題では(1)足関節底背屈訓練装置プロトタイプを用いて実験を行うことにより、受動自由度が有すべき可動範囲を明らかにする。また、内返し・外返しの運動軸に減衰要素を導入することにより、使用者に適当な負荷を与えられる構造を新たに提案する。(2)被験者を用いた実験を行って、訓練動作パラメータと訓練効果との関係を明らかにする。の2点を目的として研究を実施した。 本年度は、被験者実験による訓練動作パラメータと訓練効果の関係の解明を中心に研究を行った。特に、脳血管障害に伴う下肢の循環不全によって減少した皮膚血流が、他動的な底背屈動作によって変化するか否かを実験によって確認した。実験は若年健常者を対象として実施した。下肢の血流減少状態を模擬するために、訓練動作を行う側の脚に駆血を行った状態で訓練動作を行って関節角度、下腿部の筋電、足圧分布、アキレス腱付近の組織血流、表面温度、深部温度をそれぞれ計測し、駆血を行わない状態で訓練動作を行ったときの値と比較した。被験者6名を対象に同一人の左右両脚の皮膚血流量を比較したところ、駆血を行った場合・行わない場合のいずれについても、6名中5名について、動作脚の組織血流量に、動作中に一過性の増加が見られた。また同じ被験者について、皮膚表面温および深部温の変化を調べたところ、動作脚の皮膚表面温に訓練動作と関連する可能性のある変化が認められた。
|