研究課題
基盤研究(C)
本研究では健常成人を対象として、2年間の研究期間に(1)箸を使用して小物体を摘み持ち上げ移動する際、(2)指先で同じ物体を摘み持ち上げ移動する際、および(3)安静時、の大脳と小脳各部の活動をPositron emission tomography(PET)装置により測定し、そこから箸使用に関わる大脳・小脳の活動マップ、指使用に関わる大脳・小脳の活動マップ、箸と指使用との差を表す大脳・小脳活動マップを作成することを狙いとした。そして個々の活動領域と箸(道具)使いとの関連性について先行研究の結果と比較しながら詳細な考察を加えることも本研究の目的であった。PET実験の追加実験を実施し、全データの最終的な統計的解析を行うこと、(2)筋電データの解析を行うこと、(3)箸および指での把握力測定実験を実施すること、(4研究成果をまとめて、研究報告書を作成する。また、研究成果の学会報告と論文として欧文雑誌に投稿すること、を目標とした。これらの目標の内、(1)と(2)および(4)については、これまでの段階で、ほぼ完了している。(3)については、データ収集を完了したが、時間的な問題でデートのコンピュータ処理と変数の分析を実施したが、研究のまとめに含めるまでには至っていない。本研究で得られた成果として重要な点は、以下の通りである。箸摘みでは、安静条件での脳活動と比較して、運動肢と対側の運動感覚皮質(一次運動野、一次感覚野、運動前野、補足運動野(両側)、帯状回運動野、前頂皮質の上頭頂小葉(BA7)、後頭皮質のV1とV2の領域、視床、同側の小脳虫部、両側の小脳皮質での優意な賦活が認められた。手と安静条件との比較でもほぼ同様の領域の賦活が認められた。箸から手を引いたときの賦活領域は、背側運動前野、頭頂皮質、後頭皮質、尾状核、および小脳で優意な賦活が認められた。これらは、人の道具使用に関わる脳領域についての新しい知見である。
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Neuroscience Research 58S
ページ: 212
Advances in exercise and sports physiology 12
ページ: 93
Advances in exercise and sports, physiology 12