随意的に素早い筋運動が投・跳・打・蹴などの日常動作の根本にありその神経的機構が、主として大脳皮質由来の機能に依存するという立場で研究を進めている。研究の基本は運動の元になる動き以前の力発生解析であり、パラメータは研究開始以来筋電図放電量(時系列区間解析)、筋電図周波数特性、および随伴する脳電位活動特性である。 現象の一般的事実抽出に主眼をおいた1、2年目から、この3年目は個人差の類型特定という点で特に加齢に伴う分布変動を、健常人の広い年齢層を対象に、膝関節伸展運動及び筋電図の量的・時間的特性から有効なパラメータを求める計画をたてた。また全体的な目的からは神経筋系統合観点また、筋電図学上の観点から、筋の駆動のための神経プログラムの内容を探索がなされる必要があることから、運動単位動員と脳波の連関現象も引き続き検索した。しかし3年目初期に、制御パラメータの確立には中枢性の機序背景、中でも1側運動の神経支配が中枢側でも実行されているかどうかという確認計画を挿入して行う論理的な必要が生じた。そこで今年度研究は、3つの方向性で進められることになった。つまり、(1)素早い力発揮の所要時間が健常人の年齢別分布、(2)1側動作における両側運動皮質の振る舞い。(3)素早い力発揮時の運動単位脱動員に関連する皮質活動電位を捉える、であった。 計画(1)についてはこれまでの進捗と同方向なので順調にデータ蓄積を果たし、学会発表を行い(国内1と国際1但し後者は21年6月)論文の執筆が可能な状況に到達した。(2)は新たな基礎実験であったが、予想外に進行させることが出来て国内学会(1)に成果を発表できた。(3)の検討は(2)という新たに加えられた実行プランに影響を受け昨年同様実験進度の低い状況となった。総じてこの手法により、個人差の類型特定という点と、実際のすばやい'運動'に適用を拡延して行くこととで研究の土台は確実に構築された。
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