随意的に素早い筋運動が投・跳・打・蹴などの日常動作の根本にありその神経的機構が、主として大脳皮質由来の機能に依存するという立場で研究を進めた。可能な限り素早い随意運動は神経系の筋制御方式の中でもフィード・フォワード式であることが判っているが、その変容性や個人差等が不明である。本研究はその制御特性を解明するために以下の小目的を解明しようとして実行された。すなわち、(1)素早い力発揮の所要時間のトレーニング変容、(2)1側動作における両側運動皮質の振る舞い。(3)素早い力発揮時の運動単位脱動員に関連する皮質活動電位を捉える、(4)皮質運動プログラムの画一性検討、である。 結果として、研究(1);力目標のある素早い随意運動は力目標上からも神経生理学的にもトレーニング効果が認められた。その効果は適切な課題なら日内現象として捉えられる。研究(2);1側(片側)の素早い運動には反対側の活動が随伴する。1側筋活動の神経計画も素早い場合には両半球性の構築過程がある可能性がある。研究(3);運動野では全筋活動以前の単一運動単位レベルを操作すると考えられる皮質事象関連電位が記録されたが、詳細な言及は出来ない。研究(4);区間積分を用いた連続的変動係数(CV)の観察から、フィード・フォワード制御の素早い運動のプログラムフローは、フィード・バック制御である緩徐な力発揮のそれよりも変動性が低く画一性が高い、等々の所見を得た。
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