歩行運動が生体にどのような物理的(力学的)刺激を与えるかについては、いくつかの研究がおこなわれている。しかしながら、実際の生活環境に近い条件での歩行運動において、物理的環境条件の違いによる影響を実測した例は少ない。そこで、本研究は、地面反力として測定できる足底圧に着目し、歩行運動中の足圧変化を測定した。歩行運動では、骨の健常な状態を保つために必要とされる、体重の150%以上の圧が得られないとする報告がある。 そこで、(1)歩行速度条件を変えることによる影響。(2)荷重を背負って歩行する条件における影響。(3)階段を歩行する条件における影響について明らかにすることを目的とした。足底圧の測定は、フットスキャン(ニッタ社製)を用いた。 まず、(1)歩行速度条件の違いにおいては、歩行速度が、時速6Km以上で体重の150%以上に達することが明らかとなった。(2)荷重負荷条件においては、歩行速度が時速4Kmであっても、荷重が体重の30%以上であれば、150%以上の足底圧が得られた。歩行速度が時速5Kmでは、荷重条件が10%以上であれば、体重の150%以上の足底圧の値が得られた。通常の歩行速度の場合、背中で荷物を背負う条件により、体重の150%以上の足底圧の力を地面反力として得ることができるといえよう。(3)階段条件は、ウオーキングコースを使って実験を行った。歩行速度条件は、通常の歩行とやや速くという2条件であった。階段の上りでは、踵部の加圧よりもつま先の蹴りだし時の加圧が大きかった。それでみると、普通の速度の場合、荷重負荷がない場合でもほぼ150%のレベルに達するか超える場合が認められた。体重の10%以上では、いずれも150%以上であり、やや速くの条件では、荷重無の条件においても、体重の150%のレベル以上であり、10%以上の荷重では、比例的に増加した。荷重が30%の場合は、体重の200%以上の足底圧が記録された。階段降りでは、膝の意識的な伸展により、足底圧の値を増大させた。階段での歩行運動は、地面反力を得るためには、十分活用できる条件であると理解された。平地での歩行運動に加えて、階段の歩行運動を加えるなどすることが骨の強化に役に立つ条件を確保できるものと理解された。
|