研究2年次の目的は、1)諸外国の文献を中心に「文化としてのスポーツ」概念の歴史的経緯とその概念構成に関する分析及びデータベースの作成、2)我が国のスポーツシステムにおける体育的言説の特徴とその背景に関する分析、3)主に総合型地域スポーツクラブの現状と成果に関する教育的な観点からのスポーツ文化言説の可能性と限界、等々を明らかにすることであった。1)については、近代イギリスのレジャー・クラスから派生した「文化としてのスポーツ」概念が自己目的的であるのに対して、スポーツ教育からみたそれはきわめて手段的であり、わが国の「文化としてのスポーツ」のとらえ方にはその影響が色濃くみられることが明らかにされ、2)については、1)におけるレジャー・クラスの欠落が近代日本のスポーツ概念の成立に大きな影響を及ぼし、近代体育の概念にスポーツが包摂される限界が明らかになったこと、3)については、2)にみられる歴史社会的影響が現代スポーツの公共性を市民的公共圏のそれとして解釈させることを拒む要因になっていることが明らかにされ、今日では教育的言説と並行して、あるいはそれに代わる勢いで健康言説が、これまでのスポーツ手段論と同様の文脈で再構築されている現状がうかがえた。この現状は、現代スポーツの受容的公共圏を構成しており、これにかかわる課題と限界を指摘することが重要である。したがって、3年次においては、産・民アクターから同様なアプローチを行なうことにより、現代スポーツの公共性の可能性が議論される必要があることが理解された。
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