研究3年次の目的は、1)産・民スポーツ組織における現代スポーツの考え方や事業内容から現代スポーツの公共性がどのようにとらえられているかを明らかにすること、2)International Sport Sociology Association(ISSA)と日本スポーツ社会学会共催による国際会議において、これまでの研究成果を「スポーツと公共圏」というテーマでコーディネートしながら、現代スポーツの公共性をめぐる国際比較を行うこと、3)現代スポーツの公共性を担保する文化的視点の整理と課題の検討を行うこと、であった。1)については、100年に一度と呼ばれる世界的金融不況による企業スポーツの撤退が引きこされ、現代スポーツの社会的メッセージ性が未だに企業の公共的イメージ戦略に位置付けられていない現状が明らかになったが、一方で法人格を有する民間スポーツ組織の公共的使命がクローズアップされ、それに伴う組織的改革と事業改善が必要なことが明らかになった。しかし、産・民スポーツ関係者に共通するのは、現代スポーツの需要に対する下からの公共的価値構築への認識の低さであり、この自由な認識を阻む大きな要因として従来の体育的公共性からのアプローチの限界が考えられた。2)については、日本、イギリス、ベルギーにおけるメディア、階級、ナショナリズムをめぐる現代スポーツの公共性と公共圏に関する国際比較を行ったが、予想していたとはいえ、公共性と公共圏をとらえる歴史社会的背景が異なっており、文化的視点から公共性を論じる共通のカテゴリーを析出するまでには至らなかった。しかし、各国ともに大衆化と高度化に二極化する現代スポーツの新たな公共性をスポーツが有する文化的意味から共通にアプローチしようとしていたことは確かであった。3)については、次年度に検討することになった。
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