4年間の最終年次に当たる本年度の目的は、これまでの研究内容を整理し報告書にまとめることであるが、以下のような補足的な調査を行うことによって、本研究の全体的テーマに迫ることであった。1)産・民アクターによる現代スポーツに対する新たな公共性構築を阻む要因について事例調査から明らかにするため、スポーツ行政のなかで進行している指定管理者制度の実情と課題を事例的に調査し、関係者のインタビューと資料収集を行い分析した。その結果、行財政の効率性を求めるだけでは「産」の論理による商業主義によって現代スポーツの文化的公共性が担保されない現状が明らかとなった。2)新学習指導要領の内容から現代スポーツの公共性に対するとらえ方の変化や特徴を分析し、体育的需要の現状と課題を明らかにするため、新学習指導要領の背景と変化、方向性を調査し、学校体育システムと現代スポーツの公共性との関係性について明らかにしようとした。その結果、新学習指導要領体育の方向性は、かつての技術主義や体力主義から体育の学力を再定義しようとしており、現代スポーツの文化的需要を体力や技術の向上からのみとらえる傾向がみられた。むしろ、生涯スポーツにつながる現代スポーツの文化性を公共的に担保していくためには、学校期における多様な現代スポーツのとらえ方やスポーツ経験が学習される必要がある。その点で、中・高校期における体育理論の扱い方に注目する必要があるとの結論を得た。以上のような本年度の研究成果を補足した上で、これまでの本研究の4年間の研究成果を報告書に取りまとめた。
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