本年度は大学運動選手189名(男子126名、女子63名)を対象者として、自我発達ならびに運動部生活や日常生活で経験してきた危機を調査し、自我発達と危機経験との関連を検討した。主な結果は以下の通りである。 1.自我発達得点(TPR)の平均は、男子では4.38、女子では5.06であり、同調的段階(4)と自己意識的段階(5)の周辺に位置していた。なお、男子よりも女子の自我発達得点の方が有意に高かった。 2.これまでに経験してきた危機を複数回答を認めたうえで調査した結果、運動部で経験してきた危機としては、男子では「技術の停滞・プレーの不調(19.8%)」「チームメイトとの関係(13.6%)」「怪我(12.5%)」などが多く挙げられ、女子では「チームメイトとの関係(19.3%)」「技術の停滞・プレーの不調(15.6%)」「指導者との関係(10.9%)」などが多く挙げられた。また、目常生活で経験してきた危機としては、男女を問わず、「高校や大学への進学や進路(男子:25.1%、女子:26.6%)」「部外の友人との関係(男子:16.0%、女子:19.5%)」「勉強や学習の遅れ(男子:12.0%、女子:10.2%)」などが多く挙げられた。 3.最も重篤であった危機としては、男子では「技術の停滞・プレーの不調(16.8%)」「高校や大学への進学や進路(10.9%)」「怪我(9.9%)」などが多く挙げられ、女子では「チームメイトとの関係(18。2%)」「チームをまとめること・士気を高めること(10.9%)」「高校や大学への進学や進路(10.9%)」などが多く挙げられた。 4.最も重篤であった危機における危機の程度を3件法で調査し、危機の程度と自我発達得点との相関を算出した結果、男子ではr=.17(p=.09)、女子ではr=.24(p=.10)と有意に近い相関が得られた。このことから運動部生活や日常生活での危機の経験は自我発達に関連すると考えられた。
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