研究概要 |
本年度は,運動選手の自我発達に影響する経験として,両親やコーチといった重要な他者との父性的・母性的関わりの経験に着目し,検討を加えた.具体的には,親や指導者の父性・母性イメージを測定する尺度を作成し,選手が親や指導者に対してもっている父性・母性イメージを測定し,それらのイメージと自我発達との関連を検討した。 1.父性・母性イメージ尺度の作成 大学運動選手125名に人の特質を示す形容詞を提示し,個々の形容詞の特性を持つことが父親と母親にとってどのくらい望ましいかを調査した.そして父親と母親の得点を比較し,父親の方が得点が高かった項目と母親の方が得点が高かった項目を各々集めて父性尺度と母性尺度を構成した.次に,この尺度を大学運動選手159名に実施し,各自の父親と母親の父性・母性イメージを調査した.また76名には4週間後に再テストを実施した.そして父性・母性尺度のα係数ならびに再テスト法による信頼性係数を検討し,尺度の信頼性を確認した. 2.重要な他者の父性・母性イメージと選手の自我発達との関連 男子大学運動選手132名を対象に,父親・母親・現在のチームの指導者・高校時の指導者の各々に対する父性・母性イメージおよび自我発達を測定した.そして変数間の関連を検討した結果,父親の父性・母性イメージのみが自我発達に関連することが示された.こうした結果より,自立が要求されてくる大学期では,男子の自我発達は同性である父親の父性的・母性的関わりの影響を強く受けるといった可能性が示唆された.
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