平成21年度は、「運動有能感」の下位3因子(身体的有能さの認知、統制感、受容感)が、自尊感情や自己効力感に与える影響の度合いを比較することを目的とした。小学校でのタグラグビーと中学校のマット運動を課題とした。 小学生において、身体的有能さの認知は高いが統制感は低い群は、身体的有能さの認知は低いが統制感は高い群に比べて、自己効力感は高かった。また、身体的有能さの認知は高いが受容感は低い群は、身体的有能さの認知は低いが受容感は高い群に比べて、自己効力感は高かった。さらに、統制感は高いが受容感は低い群は、統制感は低いが受容感は高い群に比べて、自己効力感は高かった。このことから、自己効力感は、身体的有能さの認知、統制感、受容感の順に影響を受けることが明らかになった。自尊感情には、3つの下位因子間による影響の差はみられなかった。 中学生において、小学生と同様の群分けを行えなかった。すなわち、下位3因子の相関がそれぞれ非常に高かった。 このことから、小学生の自己効力感を高めるためには、「自分は身体的に優れている」という身体的有能さの認知を持たせることが重要になってくる。自尊感情は、身体的有能さの認知だけでなく、「やればできる」という統制感や、「みんなが認めてくれている」という受容感でも、高めることができる。中学生は、身体的有能さの認知が低いと、統制感や受容感も低くなってしまうため、身体的有能さの認知を高めることのみが、自己効力感や自尊感情を高めることができる。
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