研究概要 |
本年度は,これまでの初心者,熟練者を対象とした研究成果と,男女エリートスイマーのけのびの力発揮,画像解析および質問紙法による動きと感覚情報の階層構造の関連を合わせて検討した。その結果,けのびの到達距離に影響を及ぼすと考えられる身体特性および各測定項目には性差がみられることが伺われ,男子は,力発揮と体型の要素,女子は技術的な要素が関与すると解釈された。また,水中での動きの獲得や習熟には技術のトレーニングのみならず,各動作局面の認識や気づきの関与によっても効果的に促進され,特に,エリート選手は動作の主要局面に意識の集中が高まることが推察された。また。感覚情報としての泳速度出力調整と動作との関係も検討した結果,クロール泳では性別に関係なく,水抵抗を考慮した主観的努力度とそれに対応する客観的出力は,どの段階においてもかなりの精度で一致した。すなわち,ある程度の競技経験があれば,男女ともに感覚的に泳速度をかなりの確度で調整できると考えられた。さらに,けのび動作の力発揮と前方牽引による受動抵抗との関係についても検討した。その結果,3種類の牽引速度それぞれにおいて,受動抵抗(Dp)は,非熟練泳者より熟練泳者の方が小さい傾向にあった。また,非熟練泳者は到達距離が短く,かつDpが熟練泳者に比べ大きかった。非熟練者は体表面積と受動抵抗とに有意な相関がみられたが,熟練泳者は体型よりも姿勢の変化によってDpの低減を図っていると考えられた。より良いけのび動作は,0.3〜0.4mあたりの水深に接地し,水底面下方または平行に蹴り出していた。結果,重心の移動軌跡はおおよそ水深0.3〜O.6m近傍を通過することがわかった。
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