本研究課題の初年度は、三重県いなべ市(旧大安町)の平成12年度から平成18年度の行政資料の収集と分析および関係者へのヒヤリング調査を実施した。収集した行政文書には、「元気クラブ大安(現社団法人元気クラブいなべ)の設立経緯が詳細に記されており、またクラブ運営の安定化を図るためのさまざまな協働事業とこの事業を取り巻く、各種のスポーツ・健康団体や自治会、老人会などの対応や経緯を知ることができる。本年度は、これらの行政文書をすべて入手しコピー製本すると同時に、「元気クラブ大安」の設立当初のスタッフ、業務委託を行った事業者、さらには町長(現いなべ市長)、健康福祉、介護予防、地域包括センターなどの職員に対するヒヤリング調査を実施した。 その結果、三重県いなべ市では、健康やスポーツ振興を住民の生活課題に密着した身体に関わる文化的課題として位置づけていることがわかった。それは「社団法人元気クラブいなべ」が、自治体やいなべ市内の企業等からの事業委託をうける協働体制をととのえることによって、スタッフや参加する住民の身体文化の形成への具体的な展望と計画が描けたことによる。一方で、本研究では、行政資料やヒヤリング調査結果から政策提言として、いなべ市に対して「地域の元気づくりシステム」を提案した。これは、いなべ市民の健康・スポーツ活動の協働事業を支援するためのシステムであり、その上で生活上の行動変容と医療費波及効果を検証しようとするものである。つまり、施策提言の将来展望としては、健康増進と介護予防の協働事業を一元化する新しい公共サービスの方向性を示した。これらの実地研究の結果は、平成18年度の間において具体的な成果公表ができなかったため、平成19年度に公表する準備を進めている。
|