研究概要 |
次の二つの研究成果を発表した。「町民運動会の身体文化」(社会学論叢,日本大学社会学会,160:1-19,2007)と「地域スポーツクラブ会員の運動頻度の増加からみた医療経済効果-三重県いなべ市の『元気づくり体験事業』の成果から-」(日本大学文理学部人文科学研究所「研究紀要」74:161-178)である。これらの研究成果は、本研究課題において継続してきた三重県いなべ市のフィールドワークの平成12年と平成17年のものを整理したものである。前者の論文では、健康・スポーツ文化およびその振興を「身体文化」という言葉に置き換えて、1970年代に熱狂的に地方の暮らしに支持されてきた町民運動会について、その実態を明らかにして、地域住民にとって健康・スポーツ文化とはいったいどのような生活文化であったのか解明した。それは地方自治体における福祉事業および健康事業の方向性を過去の歴史と地域住民たちの集合的記憶から明らかにする必要があったからである。後者の論文では、平成14年から平成17年の4年間にわたって運動・スポーツ活動の継続化を達成できた地域住民の人たちの医療費を調査し、その医療経済的効果を明らかにしたものである。つまり、本研究課題において、前者の研究成果は、公共サービスの方向性を探る原点回帰的な抽象の議論をし、後者の研究成果では、自治体の財政基盤の安定化のための具体的な解決策を探る具象の議論をしてきた。
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