研究概要 |
本研究の課題は、1936年の第11回ベルリンおよび1940年の第12回東京(最終的には開催されず)という二つの連続するオリンピック大会への参加かボイコットかをめぐってアメリカ合衆国において展開された論争を、オリンピックの理念をめぐる論争として検討し、参加派およびボイコット派のそれぞれの論拠を抽出・分析することによって、オリンピズムの理論的構築のための基礎的資料を提供することにある。 そのために本研究では、(1)先行研究の検討、(2)主要新聞の関連記事や雑誌に掲載された関連論説の調査・検討、(3)オリンピック研究センター(ローザンヌ)およびLA84財団(ロサンゼルス)所蔵の関連史料の調査・収集と史料の解読が中心的な作業となった。 本研究の成果に関しては、第一に、ベルリン大会に関する多様な観点からの主要先行研究を調査・分析し、アメリカ・オリンピック史におけるベルリン大会に関する研究の現状と到達点を確認した。第二に、ベルリン大会参加論として、アメリカ・オリンピック委員会編集の"Fair Play for American Athletes"を、またボイコット論としては、スポーツにおけるフェアプレイ委員会編集の"Preserve the Olympic Ideal"の2つのパンフレットを取り上げ、両論の内容と主張の根拠について検討した。これらの成果に関しては、二つの論文として纏められた。第三に、ベルリン大会参加派とIOCとの間には連携が存在したことを明らかにし、学会で報告した。そして第四に、1933年から1940年までの主要な新聞(The New York Times, The Washington Post, The Los Angeles Times等)に掲載された2,000余の本研究に関連した記事や論考をデータベース化し、その中の"New York Times"(1936年8月1日〜1938年7月23日)に載った東京大会に関する記事を翻訳し、報告書に掲載した。
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