研究概要 |
本研究は,20世紀初頭の英国初等学校における課外活動としての組織的ゲーム(以下,課外ゲーム活動という)の実施と体育授業におけるゲーム教材の選定の事情を明らかにすることを研究目的とした。組織的ゲームやゲーム教材のスポーツ史的研究には,イギリスに固有な文化的・民族的な娯楽内容が教材化された意味を問うことも含んで研究対象とした。平成20年度の研究は,研究を総括を行うと共に,第1に近代イギリススポーツ史研究として最初の合法的スポーツ宣言をなしたDeclaration Sports for Lancashire,1617をまず研究対象とした。その研究成果について,スポーツ史学会第22回大会で発表した。第2に,20世紀初頭に至る時代にイギリスのスポーツやゲーム(民俗的・伝統的ゲーム活動)が学校体育に与えた影響を考察した。そして,中等学校女子校における体育授業と課外ゲーム活動の様相を1898年刊の『教育問題特別報告』所収の資料の分析を中心に研究を進め,(社)日本体育学会第59回大会でその研究成果を発表した。体育授業の内容の改善(ゲーム教材への着目),体育授業担当の教師の養成と資格付与,学校運動場の設置基準の策定(課外ゲーム活動実施場所確保の模索)などは学校体育政策として国家関与の徴候とみることができた。それらは,研究成果報告書に内容を盛り込むこととする。さらに,1910年代に課外ゲーム活動振興方策が策定され,体育授業へのゲーム教材の採用が促進されることを福岡教育大学体育研究センター紀要に掲載の原著論文で公表した。それによって,3年間の研究の総括も行った。
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