これまでのレジスタンスエクササイズ中の筋活動様式に関する研究では、運動速度を規定しているものが多く、速度が変化し、発揮パワーが変化したときに運動に関与する筋群の筋活動水準がどのように変化するかという点については検討がなされていない。そこで本研究はレジスタンスエクササイズにおける多段階の負荷条件において、最大努力で挙上動作を実施した際の発揮パワーとこれに関与する筋活動を評価し、パワー発揮と筋活動について検討することを目的とした。 単関節運動中のパワー出力と筋活動量について検討した結果、肘屈曲動作時に上腕二頭筋の筋活動において、発揮パワーとの相関関係が認められなかった。強度の増加にともない筋活動量は増大することが一般的な知見であるが、低強度(低筋出力)条件でも高強度条件と同水準の筋活動が見られた。すなわち、最大努力で動作することでパワー出力が60%の場合であっても、100%と同様な筋活動水準であることが明らかとなった。 さらに、多関節運動としてベンチプレスを実施した。ベンチプレスにおいては大胸筋、三角筋前部、上腕三頭筋長頭、上腕三頭筋外側頭および上腕二頭筋の筋電図を導出した。このような多関節運動においては、筋によって役割や貢献度が異なる可能性が推察された。そこで各筋の筋活動とパワー、最大パワー発揮時の力、速度などの変数との相関を検討した。その結果、単関節運動と同様にパワー出力と筋活動には有意な相関関係は認められなかった。しかし、大胸筋と上腕三頭筋外側頭において、筋活動と各運動試行の最大筋力およびピークパワー出現時の力との間に有意な相関関係を認めた。 これらの結果から、最大努力で挙上するという条件下においては、発揮したパワーと筋活動水準に関係性は見られないこと、ベンチプレスにおいては大胸筋と上腕三頭筋外側頭が挙上により貢献していることが示唆された。
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