平成18年度は、A:心拍変動(HRV)を用いたパフォーマンス能力評価およびトレーニング強度設定の可能性、B:HRVによるアスリートの心身のコンディションの把握の可能性について研究を進めた。 Aに関しては、HRV閾値のコンセプト(Neumannら、2001)に着目して、HRV閾値現象がとらえられるかどうか、HRV閾値が捉えられるとすれば、HRV閾値に対応する運動強度・血中乳酸濃度・心拍数はどのような値を示すか、またHRV閾値と乳酸閾値の関係性はどのようなものかという点を中心に検討を行った。この研究では、SD1ミニマムの現象として捉えられるHRV閾値が多くのケースで認められる可能性が示唆されたが、HRV閾値現象は乳酸閾値よりも高い強度で捉えられる傾向が認められるものの乳酸閾値との間に明確な関係性を確認するにはいたらなかった。アスリートのパフォーマンス能力の評価やトレーニング強度設定に関してHRV測定を用いることが出来るかどうかについては平成19年度の研究において被験者を増やし検討をさらに進める必要がある。 Bに関しては、パイロット研究として、ボート競技の日本代表選手の世界選手権前の海外合宿期間中および大会期間中の約2ヶ月間の起床時の安静HRVを継続的に測定・解析し、その推移を検討した。この研究では、SD1およびHFの推移から、ハードなトレーニングの持続する鍛練期から調整期(いわゆるテーパリングの期間)に移行することにより心拍変動が増大し副交感神経活動が高まることが示唆された。これらの結果も踏まえ、平成19年度の研究において多くの事例について検討を重ねる計画である。
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