平成19年度における研究成果としては、第1に、近代ドイツの市民社会の形成にとって重要な役割を果たしたと考えられる協会組織の歴史的な意味と結社研究の研究状況を学会誌(スポーツ史学会編集『ひすぽ』)で紹介したことである。紙幅の関係から、主に体操協会に関する従前の研究傾向、すなわち協会の自発的、啓蒙的な側面への着目の反省から、協会組織における公共を求める意識(ある種の啓蒙性)が倫理的な教化ともなりうる点を論点として強調した。論文発表後、学会でより詳細な紹介を期待する意見が提起されたこともあり、次年度、学会のメディアなどを活用し、より詳細な報告を行いたい。 第2に、昨年度、M.クリューガー教授(ミュンスター大学・ドイツ)が第1回スイス歴史学会(ベルン大学・スイス)において報告したK.フェルカーの国境を越えた活動に関する論稿を氏の了承を得て翻訳したことである(この国際学会には本研究者も参加)。K.フェルカーは主として西南ドイツの体操協会活動の市民的共同をはじめとする特質を考察するうえで欠くことのできない重要人物の一人であるが、クリューガー教授の研究により、ドイツ国境を越えた地域(英国、フランス、スイスなど)での諸活動の概要が初めて解明された。この翻訳は次年度において立命館大学産業社会学会誌である『立命館産業社会論集』に掲載される予定である。 第3に、ドイツ・シュトゥットガルト州アルヒープにおいて、体操協会と自主消防団との関係を裏付ける史料を入手できたことである。これはスイスとドイツの体操協会において共通する問題であり、なるべく早く論文として公表したい。
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