研究概要 |
本年度は,昨年度行ったアンケート調査(全国の合併市町村294ケ所に所属する体育指導委員を対象)の結果を分析、考察した。 調査は,「平成の大合併」と言われた大規模な市町村合併において,地域の広域化に伴うスポーツ環境の現状を把握し,これからの望ましいスポーツ空間構築のための諸課題を明らかにすると共に,地域住民にとって望ましい広域スポーツ空間を作り上げていくための基礎資料を得ることを目的とした。対象となった体育指導委員は9,575人で有効回答数は4,049人(回収率42.3%)であった。 結果,スポーツ環境満足度では,合併前の方が合併後より高く,その要因として施設使用料の値上りや利用手続きの複雑さ,利便性の悪さなどが上げられた。これらは,特に「編入(被受け入れ)」側にネガティブな回答が多い結果となった。しかし,一方でスポーツ環境自体は合併前に比べ,よくなったと評価する割合が全体的に高い結果となった。その要因として,利用できる施設が増えたことやイベント情報,スポーツ大会や講習会,さらには他団体との交流が増えたことなどが上げられた。これは,合併前は他市町村だった地域に合併後出かけ,活動をするようになった多地域活動派に,よりポジティブな回答が多い結果となった。また,今回の合併は,自分達の地域に対する関心や親しみをより感じさせるいい機会になっていることが明らかになった。これらは,新たなスポーツ環境構築のための地域住民との交流、連携を築くきっかけになること,さらにはスポーツ以外の地域の問題などにも取り組むコミュニティーの形成に役立つものと期待できることから,地域のスポーツ活動を通した他との交流や情報交換の場をこれからも積極的に用意することが望まれた。
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