研究概要 |
本研究の目的は、顕微鏡下の骨格筋内微小循環網に沿った血管内皮細胞由来の一酸化窒素(NO)濃度の異方性を一酸化窒素(NO)微小電極により定量的に測定し、同時に計測する筋微小循環系の血流速度・血管径・ずり応力とNOとの関連を明らかにすることである。2006年度は、ラット挙睾筋の細動脈から終末細動脈に至る微小循環網に沿ったNO濃度変化を測定し、血管近傍のNO濃度と血管径の関係について定量的に検討した。 Hannover-Wistar系雄ラットの右挙睾筋の生体内標本を作製し、顕微鏡下で径30〜100μmの細動脈の赤血球通過速度(optical Doppler velocimeter, CircuSoft Inst. LLC, USA)、血管内径(Video dimension analyzer, LSI, USA)、血管近傍のNO濃度(Apollo 4000-2, WPI, USA)を計測した。NO電極先端径は7〜30μmであり、マイクロマニピュレーターを用いて、細動脈近傍へ留置した。 細動脈近傍のNO濃度は、715.5±277.7nM(7)であった。径70〜100μmの1A細動脈近傍のNO量は860.6±277.6nM(3)であり、径50〜70μmの2A細動脈近傍では606.7±257.0nM(4)であった。これらの値は、本研究と同様の微小電極法で測定されたヒトの皮下組織のNO濃度655±71nMと同程度であった。ラット挙睾筋の生体内標本の細動脈近傍のNO濃度を血流速度及び血管経とともに経時的に測定することが可能となった。2007年度においては、電気刺激による筋収縮および局所的なアセチルコリン投与によるNO濃度の変化と血管径・血流速度の変化についてを定量的に分析する。
|