研究課題
血中アミノ酸濃度の上昇は、タンパク質合成を高めることが知られているが、なかでも分岐鎖アミノ酸であるロイシンはその作用が強い。しかし、細胞内ロイシン濃度の上昇は、分岐鎖アミノ酸代謝の律速酵素であるBranched-chain α-keto aciddehydrogenase(BCKDH)を活性化するため、ロイシン代謝が促進される。すなわち、細胞内ロイシン濃度の上昇はタンパク質合成を促進するが、同時に自らの代謝を高めてしまうため、その効果が制限される可能性が考えられる。そこで本研究では、ラット肝臓のBCKDH活性には性差が存在することから、ロイシンのタンパク質合成促進作用とBCKDHとの関連を雌雄ラットで比較検討した。明期後半(8時間絶食群)にロイシンの経口投与(70mg/100g/BW)を行ったラットは、蒸留水投与群に比して、雄雌ともにタンパク質合成促進作用の指標であるp70 S6 kinase(p70S6K)のリン酸化が約2倍に上昇した。一方、18時間の絶食後にロイシン投与を行ったラットでは、雄のみで蒸留水投与群に比してp70S6Kのリン酸化が高まった。すなわち、雄と雌の肝臓におけるBCKDH活性が異なる明期後半の条件下であってもロイシンによる骨格筋でのタンパク質合成促進作用は同等に上昇した。一方、18時間絶食後の雄雌ラットで比較すると、ロイシンのタンパク合成促進作用は雄ラットのみで認められた。先行研究によると、18時間絶食後には肝臓BCKDH活性は雌雄ともに低下する。したがって、18時間絶食後のラット骨格筋におけるロイシン刺激後のp70S6Kのリン酸化レベルの相違には、肝臓BCKDH活性の影響は低いことが示唆された。雌雄差の原因として性ホルモンなどの作用が考えられるが、その詳細についてはさらなる検討が必要である。
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Am. J. Physiol. Cell Physiol. 293
ページ: C35-C44
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