1.本研究は、骨格筋の活動量の低下とそれにともなう筋萎縮、ならびに回復時の変化に対する筋線維アポトーシス反応の関連を検討することを目的に、14日間の後肢懸垂直後、およびその後の回復3、7、14日におけるラットヒラメ筋線維のサイズ(横断面積)、筋線維組成、ミオシン重鎖成分、筋核数、およびアポトーシス核数の変化について検討した。 2.実験にはWistar系雄ラットを用いた。DAPI染色およびMyogeninによる筋形質膜の染色により筋核の同定をおこなった。また、アポトーシス核の同定にはTUNEL染色を施した。 3.14日間の後肢懸垂直後では、遅筋線維および遅筋タイプのミオシン重鎖成分の割合が有意に減少し、逆に速筋タイプの線維・ミオシン重鎖成分が増加した。また、筋線維横断面積の有意な低下、筋線維1本あたりの筋核数の減少、筋核1個あたりの筋線維支配領域(myonuclear domain)の減少、および筋線維100本あたりのアポトーシス核数の増大が認められた。 4.回復〜14日間では、筋線維タイプは中間タイプ(Hybrid)線維の割合が増加し、ミオシン重鎖成分はコントロールと同じレベルまで回復した。さらに、アポトーシス核数の著しい減少とそれにともなう筋核数、筋線維横断面積の増大が認められた。 5.以上の結果から、後肢懸垂にともなう筋線維の萎縮は、アポトーシスによる筋核数の除去・減少が引き金になったものと推察され、回復期には、アポトーシス陽性反応の低下により、筋核数と線維サイズが回復したものと考えられる。また、回復期のこのような筋核数の増大は筋衛星細胞の活性化に起因すると考えられ、このことについては今後の分析課題とする。
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