肥満症や高血圧、高脂血症並びに糖尿病など生活習慣病においては、交感神経の活動亢進が認められる。特に高血圧症では、筋や骨代謝にも影響を及ぼすことが報告されているが、骨組織構造との関係を検討した報告は希少であり、本研究では自然発症高血圧ラットを用いて、骨組織構造の違いや量的構造の変化について観察し、薬剤や運動効果についても検討した。 自然発症高血圧ラット(SHR)及び対照ラットを40〜44週齢時に心拍数並びに血圧をラット・マウス用非観血式血圧計を用いて計測した結果、対象群と比較してSHRラットでは心拍数、血圧が有意に高く高血圧を発症しており、フラクレット解析により交感神経亢進状態の傾向を有した。骨梁面積、類骨幅、骨量面積当たりの類骨面積は有意に小さいことが観察された。類骨並びに骨芽細胞について光学顕微鏡にて観察したところ、SHR群における骨芽細胞はCont群に比べて小さく偏平なものが多く、その活性度が低いものと推察された。自然発症高血圧は骨量低下を引き起こすことが示唆され、骨梁構造や骨形成に負の影響があることが推察された。またこれらのSHRラットにβ遮断薬(プロプラノロール)を投与もしくはモデレートな運動(自発走)を実施することで骨量は高値を示した。特に類骨面積が改善され、骨芽細胞による骨基質形成促進を示唆するものであった。以上のことから交感神経を介した骨量の調節機序があるものと示唆され、適度な運動の骨量維持改善に対する効果は、メカニカルレストレスや液性因子に加え、神経性にもアプローチしうる可能性を有した。
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