本研究の目的は、近年、健康教育およびヘルスプロモーションの領域で注目されている行動科学的手法を体育授業へ積極的に導入し、大学新入生の健康にどれだけ貢献できるかを評価することであった。 研究1年目の平成18年度は、大学入学直後の前期に「生活習慣全般の改善」を、夏休み明けの後期に「身体活動の増強」を各々ねらいとした介入プログラムを実施した。また、大学生活スタイルがある程度安定した7月における生活習慣が、修学状況とどのような関係にあるのかを検討した。その結果、「食事や睡眠を軸とした規則的な生活リズムの維持」と「日常生活における低い強度の身体活動」が修学状況と関連のあることが示唆された。 研究2年目の平成19年度は、前年度に実施した介入プログラム2種の効果検証を行った。1.春学期において、大学新入生男子1090名を対象に、行動科学に基づく生活習慣改善プログラム(日常生活における健康行動のモニタリングと行動変容技法に関する講義)を含む介入群と、それらの要素を含まない非介入群に分け、各々の受講前後の生活習慣を比較した。その結果、行動科学に基づく宿題を併用した体育授業プログラムは、大学新入生男子の身体活動・食事・睡眠といった生活習慣全般を改善できることが明らかとなった。2.秋学期において、大学新入生男子993名を対象に、行動科学に基づく身体活動増強プログラム(日常生活における身体活動のモニタリングと行動変容技法に関する講義)を含む介入群と、それらの要素を含まない非介入群に分け、各々の受講前後の身体活動関連変数を比較した。その結果、行動科学に基づく宿題を併用した体育授業プログラムは、大学新入生男子における身体活動関連の心理・行動・生理的変数への包括的効果を持つことが明らかとなった。 以上の研究成果として、大学新入生を対象とした行動科学に基づく体育授業用の手帳を発行した。
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