研究概要 |
過去の研究で,身体活動や食行動の変容に対し紙媒体を利用した支援の有効性が実証されている。しかし,介入頻度や介入内容についての検証はほとんどされていない。また,紙媒体による支援が,呼吸循環器系心疾患のリスクファクターに及ぼす影響についてはほとんど検討されていない。本研究では,著者らが開発してきたICTを活用した教材作成、管理支援システムを使用し,無作為化比較試験によって紙を媒体とした習慣改善支援が,身体活動量,食行動の変容と呼吸循環器系心疾患のリスクファクターに及ぼす影響の検証を目的とした。 4市町村から参加してきた被験者281名を無作為に3群に振り分けた。全ての群の参加者に,歩数計を配布)し,定期的な歩数記録を求めた。同時に第1回目に郵送された教材を用いて具体的な目標設定することを求めた。1回介入群(87名)の参加者には,他の介入をそれ以降行わなかった。3回介入群(90名)には上記に加えて,2週間ごとに2回,計3回の教材送付とアドバイスフィードバックを行い,課題として目標達成度評価,目標実践の妨げの発見と対処について考える課題を与えた。4回介入群(91名)には,3回メール群の内容に加え,さらに2週間後に4回目の課題として,長期にわたる生活習慣改善が途切れる状況を発見し,その対処法を考える課題(再発防止訓練)を与えた。 2ケ月のプログラム前後およびプログラム終了12カ月後の値を分析したところ,2ケ月の前後では,身体活動量,総コレステロール,トリグリセリドを除く,全ての指標に改善効果がみられた。長期効果についてはBMI,総摂取エネルギー,HDLコレステロールの値が,プログラム終了から12ケ月間維持されていた。この期間の変化量に群間差はほとんど見られなかった。以上のことから,介入頻度。内容にかかわらず,本研究で用いた紙媒体による生活習慣改善プログラムは,食行動の変容と呼吸循環器系心疾患のリスクファクター改善に有効であることが明らかになった。
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