本研究は、日本人糖尿病患者に適した生活習慣指導の内容について解析し、将来のわが国の食事・運動療法ならびにその指導に活かしうる科学的エビデンスを得ることを目的としている。糖尿病治療において重要な因子である食事・運動・喫煙・飲酒などの生活習慣因子について、現在全国的に追跡されているコホートを個別または統合して用いている。今年度は、特に糖尿病患者の喫煙の弊害に焦点を当てて解析を行った。これまでの報告で曖昧にされていた交絡因子を丁寧に調整または層化して解析したところ、定説とは異なり、現に喫煙している患者のみならず、すでに禁煙した過去の喫煙患者においても、糖尿病腎症の発症リスクが高まっていること、さらにそのリスクが生涯喫煙総量や一日喫煙量などと量・反応関係を示すことなどが新たに明らかになった。この成果は、糖尿病臨床研究のトップジャーナルである米国糖尿病学会誌に掲載が決定している。今後はさらに、糖尿病発症者、未発症者別に、食事摂取量ならびに身体活動量と、肥満度・血糖・血圧・血清脂質などの心血管疾患リスクファクターとの関係が、日本人と欧米白人とでどのように異なるのかを断面的に解析する。このことにより、日本人における糖尿病発症者・未発症者の特徴的な食事・身体活動の特徴を把握する。さらにわが国の糖尿病患者において、身体活動量ならびに運動療法遵守度が、糖尿病患者において、その病態の重症度や合併症の発症にどの程度関連したかを、前向き研究において明らかにする予定である。
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