研究概要 |
本研究は,養護教諭の経験知や経験的主観に因る現在の実践技術の効果を科学的に評価し,その有効性を検証するものである。 本年度は,児童生徒のコミュニケーション能力や自己表現能力の育成の目的で,保健室において実践されている技法や実践可能な技法について心的影響や生理的有効性を解析検証した。 検証した技法は,「コラージュ制作」「粘土制作」「パロ(メンタルコミットメントロボット)との触れ合い」である。これらの3技法について,実践前後の(1)ストレス応答の変化(唾液:アミラーゼ・コルチゾール・s-IgA・クロモグラニンA)(2)心理的変化(STAIによる心理テスト(3)アナログスケールによる自己評価,より検証した。 メンタルコミットメントロボットパロは,STAIによる状態不安尺度,ストレス応答物質反応ではコルチゾールの変化が見られた。さらに,自己評価では前後比較の3項目に変化が見られた。次にコラージュ制作では,STAIによる不安尺度の変化は見られなかったが,ストレス応答物質反応ではアミラーゼとコルチゾールに,また,自己評価では2項目において変化が見られた。粘土制作においては,STAIによる状態不安尺度,ストレス応答物質反応ではコルチゾールにおいて変化が見られた。さらに,自己評価では1項目に変化が見られた。 以上の結果より,今回試みた技法が,児童生徒のストレス緩和において心理的・生理的に有効であることを示唆する結果を得た。 したがって,養護教諭が日々実践している活動の意義を科学的視点から支持する根拠となると考えられる。
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