研究概要 |
2006年8月に横尾山荘(標高1600m)宿泊者で翌日穂高岳方面の登山予定者に協力を依頼し調査し、40歳以上79名(男性41名、女性38名)の結果について検討した。調査は、横尾山荘では日常の運動習慣・健康状態に関するアンケート調査に加え、血圧・脈拍・SpO2測定を行った。翌日、穂高岳山荘(標高2996m)到着後に血圧・脈拍・SpO2測定を行った。 【結果】 79名のうち70名(88.6%)が標高2500m以上の山に5回以上の登山経験があった。登山者の健康状態について、何らかの健康上の問題を持った者の割合は男性で41.5%、女性で25.0%であり、疾患は高脂血症、高血圧、高尿酸血症、糖尿病の順であった。普段の運動習慣について、週に1〜2回以上の運動習慣のあるものの割合は男性で46.3%、女性で73.7%であった。 横尾山荘と奥穂高岳診療所での測定結果では、収縮期血圧、拡張期血圧そして脈拍数は有意に増大し、SpO2は有意に低下した。血圧の変動では3000mの登山でやや上昇するが,危険な数値となったものはみられなかった. 【考察】 中高年層の奥穂高岳登山者のほとんどは習慣的な登山者であり、一般の中高年者に比べて運動習慣のあるものが多く、登山が運動習慣の良い動機づけとなっていると考えられる。しかし、高血圧症、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病を持ったものも少なくない。また実際の調査のなかで、治療中の登山者の中には、服用薬品名やその作用などの知識が不充分であるとなど、自己の健康管理が不十分なものみられた。3000メートル級の登山は、身体に与える影響が大きいと考えられ、さらなる自己管理が大切になると考えられる。
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