研究概要 |
本研究は、骨格筋におけるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の役割を培養細胞およびラット神経切断後肢筋萎縮モデルを用いて明らかにすることである。平成20年度の予定としてカロリー制限やトレッドミル運動の効果に関する検討も挙げた。骨格筋細胞においては、未分化な筋芽細胞が筋管細胞に分化していく経過を異なる細胞外基質やコラーゲン3次元培養で観察した。細胞からのMMP-2分泌は、コラーゲンIやコラーゲンIV上で培養された場合、通常の培養皿やフィブロネクチン上においてよりも増加し、3次元内では活性化がみられた。一方、分化はむしろフィブロネクチン上で促進されることが示唆され、3次元内では特徴的な形態変化をとることから、その意義について引き続き検討している。神経切断モデルにおいては、萎縮筋と健常側筋とを比較し経時的にザイモグラムで検討した限りにおいては、MMP2の発現や活性化には有意な差を認めなかった。一方、糖取り込みは神経切断1日目より低下し、筋の蛋白合成や糖代謝シグナルに関連するインスリン-AKT1/2-Glut4シグナル系の変化では説明できない糖取り込みのメカニズムがあることが示唆された(川田ら7th World Congress on Aging and Physical Activityにて発表)。筋萎縮に関しては、秋間らとの共同研究で、ヒトでの片足サスペンション法を行っており、骨格筋の機能・形態とトレーニングの関連を検討している(秋間ら第63回日本体力医学会大会にて発表;Aviat Space Environ Med,in press, Akima H. et al.)。また、筋生検標本において、AKTの役割などを検討している。カロリー制限やトレッドミル運動のモデルについては、骨格筋でのインスリン抵抗性の改善をインスリンクランプ法で明らかにした。加齢や病気による筋萎縮の予防が、高齢者の身体機能の維持にとって重要な課題であることから、未分化細胞の骨格筋への分化メカニズムや筋萎縮に関する知見は今後より重要になってくると考えられ引き続き研究を進めていく予定である。
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