研究概要 |
メタボリックシンドローム(MetS)および発症予備軍を対象として、さまざまなMetS危険因子に加えて、対象者の炎症マーカーおよび炎症性サイトカインやアディポネクチン(APN)の血中レベルを測定し、MetS危険因子や腹部肥満との関係を明らかにし、臨床病態の解析を行っている。まず、血中高感度CRP(hs-CRP)、IL-6、IL-10、TNF-αおよびAPNを測定し検討を加えた。MetS危険因子の集積に比例して、血中hs-CRPおよびIL-6レベルは有意に高く、またAPNレベルは有意に低くなった。またこの傾向は、腹囲を必須条件とした本邦の基準を用いても同じであった。血中APNレベルはhs-CRPと有意な負の相関を示したが、IL-6レベルとの相関は認められなかった。次に、IL-10を中心として解析を行った。血中IL-10レベルは、hs-CRP、IL-6、TNF-αと有意な負の相関を認めたが、APNとは相関を認めなかった。しかしながら、MetS群においてのみIL-10とAPNの間に有意な正の相関を認め、MetSの病態における密接な関与が示唆された。次に、アディポサイトカインがMetSの発症リスクにどの程度関与しているかを検討した。hs-CRP高値群ではMetSに対するodds比は4.16、APN低値群では2.95であり、両方を兼ね備える群ではMetSに対する頻度は42%(odds比:7.73,95%CI,2.21-27)と著しく高くなった。腹囲に加えて一つの危険因子を持つ群をMetS予備軍と設定したが、hs-CRP高値/APN低値群において、MetS予備軍に対する頻度は83%とさらに高くなった(odds比:14.3,95%CI,3.04-67.55)。CRPとAPNはMetSに密接に関与し、腹部肥満があり診断基準を未だ満たさない予備軍でも、これらのサイトカインに変化が観察されることが明らかになった。
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