研究概要 |
動脈の健康状態を無侵襲かつ簡便に評価する方法を開発する意義は大きい.過年度の研究において,我々は指動脈の圧-容積関係を指数関数で近似するモデル〔V=a-b×exp(-nP)〕による指動脈弾性特性の評価方法を提案した.このモデルのうちパラメータnを指動脈弾力指数(Finger arterial elasticity index : FEI)とし,平成18年度は血管内皮機能および心理的影響要因との関連を中心に検討した.血管内皮機能の標準検査法は,反応性充血(reactive hyperemia : RH)時の橈骨動脈流量依存性血管拡張反応(Flow-mediated dilation : FMD)を超音波画像分析による測定を実施した. 実験1:血管内皮機能を規準化脈波容積(normalized pulse volume : NPV)の応用によって評価し,標準検査法FMDと比較した,左右第2指で測定したNPVから指動脈トノメトリ(peripheral arterial tonometry : PAT)を算出し,PATと%FMDの相関分析およびストレス課題負荷による変化を検討した.ストレス課題負荷によりPAT, FMDいずれも低下したものの有意差はなかった。以上よりPATを血管内皮機能検査へ応用するには,RH時のNPVの測定方法および実験参加者数という点からさらなる検討が必要と考えられた. 実験2:FEIと血圧,脈波伝播速度および心理的影響要因との関係を検討した.FEIとSBP, MBP, GHQの「不眠と不安」「総合点」の相関ではいずれも負の相関が認められた.FEIはその値が大きいほど血管の弾力性が増すことを表し,GHQの「不安と不眠」「総合点」が高いほど指動脈弾力性は低下することが示唆された. 平成19年度は実験参加者数を追加し,さらに検討する予定である.
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