1.昨年度に新規開発したダグラス窩から肝臓上縁までの腹腔全域の低線量CTスキャン(スライス幅0.5mm、スライス合計最大800スライス)の画像解析システムを用いて、180例の腹部内臓脂肪体積と腹部皮下脂肪体積を評価し、他の臨床因子との関連性を検討した。その結果、これまで臍部で計測されていた平面的な内臓脂肪や皮下脂肪の面積と立体的な総体積との相関係数はともに0.9以上と良好な相関関係であること、しかしBMIが25kg/m2以上の集団に限定すると相関係数が0.7程度に低下すること、内臓脂肪面積が最大となる解剖学的な位置は臍部ではなく、さらに1〜1.5椎体上方であるが肥満の程度によりその位置は異なることが明らかとなった。これらの結果は同一例の経時的な内臓脂肪の変動を評価するには臍部の平面CTのみでは不正確であることを示唆しており、総体積による評価の必要性が改めて確認された。 2.人工膵臓によるグルコースクランプに経ロブドウ糖負荷試験を併用した骨格筋と肝臓の臓器別インスリン抵抗性測定、1H-MRSによる骨格筋と肝臓の細胞内脂肪量測定による評価から、メタボリックシンドローム例の耐糖能には肝臓の細胞内脂肪(脂肪肝)が深く関与していることが明らかとなった。また最短2〜3週間の生活指導で、内臓脂肪体積は有意な減少を認めないにもかかわらず、脂肪肝量は平均25%の減少を示し、耐糖能は明らかに改善することが判明した。以上からメタボリックシンドロームのインスリン抵抗性に最も関与する因子は内臓脂肪量ではなく、肝臓内脂肪量であることが示唆された。 3.メタボリックシンドロームに関する遣伝子多型の探索は平成21年度も引き続き、一次スクリーニングを継続中である。
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