研究概要 |
研究対象となった保育園は、収容人員250名の私立保育園。入園前に接種すべき予防接種については毎年保護者へ通知し、勧奨を行っているが、任意接種である水痘ワクチン接種率は非常に低く11%で、平成17年度は27名の水痘発生がみられていた。平成18年度は従来されてきた勧奨のみ、19年度は保育園にて積極的に予防接種を行う。平成18年5月より、水痘発症者の保護者に調査票を配布した。発症者は、必ず医療機関を受診し、水痘の確定診断がなされるようにした。調査票に病状と診療に要した諸経費、発症者の看病のために離職を余儀なくされた日数とその経済的損失について記載の上、回収した。その結果、18年度は12名の発症であった。この12名のうち8名より調査票を回収できた。ワクチン末接種者が5名、接種者は3名であった。ワクチン末接種者の1名に膿痂疹がみられた他は、合併症はみられず、全例入院されていない。また、ワクチン末接種、接種による熱、発疹数などの重症度に差はみられなかった。回収者の受診に要した費用は平均1,184円で、家族が看病のため仕事を休んだことによる経済的損失は平均17.129円であり、合計18,313円であった。件数は少ないが、平均18,313円の損失であり、水痘予防接種費用を仮に8千円としても予防接種を行い、集団免疫をつけることが経済的であることが推察された。今年度の調査では診療内容を調査していないため、直接医療費として保険診療費を含んでいない。また、家族看護に関する費用についても休業した分の減所得のみを調査しただけで看病をした家族の日数を考慮した負担や病児保育の総額を含んでいない。以上の理由より、実際の経済的損失は今年度の調査結果よりも大きいことが予想される。19年度は、これらの費用についても調査し、調査対象を1施設から6施設へ拡大する予定である。
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