研究概要 |
イネモミガラに含まれるモミガラ由来ペルオキシダーゼの粗酵素の抽出法の検討,濃縮法の検討,反応条件の再構築等を検討し,実用化の可能性の糸口とすることを目的として,本年度は以下の検討を行った。 1:粗酵素の濃縮に関する検討(森崎・森田) 10-12月にかけて,昨年確立した精製法で新鮮なモミガラから抽出を行い,冷凍保存し,同時に粗酵素抽出液の段階で,昨年度選定した有機溶媒(イソプロパノール)を用いて,濃縮方法の検討を行った.得られた抽出酵素の比活性で純度を求め,収率なども加味して最適処理方法を検討したところ,イソプロパノールによる濃縮は簡便であるが,収率は低い結果となった.一方,粗酵素抽出液の段階で硫安を用いた濃縮を行うと高い収率が得られた. 2:イネモミガラの鮮度が抽出粗酵素の活性に及ぼす影響(森田) 収穫直後からイネモミガラの保存方法等による抽出粗酵素の活性を検討した結果,屋外(外気温)活性が大幅(80%)に減少しているのに対し,冷凍保存後のイネモミガラからの抽出粗酵素の活性の減少は少なかった.しかしながら,冷凍保存でも,6ケ月でおよそ40%減少した.ネモミガラでの冷凍保存はスペース上問題があり,抽出液による冷凍保存の可能性を探る必要がある. 3:粗酵素による色素の退色反応の解析(森田) 抽出した粗酵素を用いての酵素純度が色素の退色反応および化学発光反応に及ぼす影響を速度論的に検討した結果,市販(精製)酵素と比較して同濃度の酵素溶液でありながら化学発光反応よりも色素の退色反応の進行が遅くなった.これは,共存物質が色素の退色反応に影響を与えたことによるものと推察される.粗酵素中の共存タンパク質が色素の退色反応の反応速度に影響を与えることから,ゲルろ過およびイオンクロマトの併用による精製酵素が望ましい。
|