研究概要 |
本年度は,吸水にともなうゲル膨潤に関して,溶液に含まれる塩の種類,濃度,pHなどを変えて広範に測定し,ゲルの膨潤特性を詳細に調べた.そして,示差走査熱量分析と弾性率の測定を引き続き行い,ゲル中の水とゲルの網目構造に着目して考察を進めた.水溶性高分子であるポリビニルアルコール(PVA)やポリエチレンオキシドより調製したゲルから適切なものをいくつか選択し,その系に対して直接染料の収着性を測定した.ゲルを純水膨潤状態で所定の重量秤取り,溶質を含む水溶液に浸して収着平衡に達しさせた後,ゲル中の溶質濃度を決定し収着量を見積もった.染料濃度については,現有の紫外可視分光光度計を用いて決定し,塩濃度については現有の電気伝導度計を用いて決定した.また,消臭機構解明に関しては,遷移金属や含金属染料で処理した綿布に対して,気相中での消臭特性を検知管法で調べることにより行った.においモデル物質してはエチルメルカプタンを用いた. 本年度は,得られたゲルの膨潤挙動(吸水特性)を捉えること,そして,消臭機能ゲルの重要な要素である消臭性付与の方法を検討することが重要であった.単純に考えると,ハイドロゲルはわずかな高分子と多量の水から構成されているため,物質収着しにくいものと思われるが,PVAゲル中に存在する微結晶や,多糖類の架橋構造は,染料などの収着に必要なサイトとなる大きさを十分に有しており,水素結合や静電気的な相互作用なども同時に存在するため,消臭機能性を持つ物質の収着は十分に起こりうると考えられた.
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