「しっとり感」「ぬめり感」の分析と定量化、ナノファイバーマテリアルの表面特性解析を行い微妙な接触感覚の評価に用いる特性値の抽出と測定機器の構築を行うための基礎データを収集した。 マイクロファイバーの起毛布、繊維直径が10〜20μの絹織物、ポリエステル布を用いて「しっとり感」を手触り評価しKESシステムを使用した布の力学、表面、通気、熱移動特性データとの関係を調べた。その結果、手で触ったときに柔らかく、あたたかく感じる布に、より強い「しっとり感」があることがわかった。物性値では布表面からの最大熱流束q_<max>との相関がみられたが、布の水分率との関係は明確ではなかった。また官能検査の際に軽く指で押さえる方法をとったため、布の曲げやわらかさとの関係は明確ではなかった。アクリル糸の長さを変化させたパイル布を用いて、毛の流れとピアノ線の接触子間の摩擦抵抗を測定し、毛が流れながら皮膚に接触したときのなめらかさを定量化する装置試作にむけた検討を行った。U字型ピアノ線1本を用いた結果、定量化には流れの方向や、初期条件の設定に工夫が必要なことがわかり、今後さらにデータを蓄積する必要がある。スマートテキスタイルの医療分野への応用を考えるため、シルクフィブロインとナイロン66をブレンドしたナノファイバーファブリックを作製し、表面特性を解析した。繊維を配向させ、繊維軸方向の摩擦係数(MIU)、摩擦係数の平均偏差(MMD)を測定したところ、ナイロンにシルクをブレンドすることでMIU、MMDともに大きく減少した。またブレンドファブリックは、絹とほぼ同等の摩擦係数を示したことより、シルクライクな布が作製されたといえる。繊維が配向したナノファイバーファブリックよりも、繊維がランダムに集合している試料の方が、ひとが触れた時にはより「しっとり感」を感じる。すなわち、繊維間の微細な空隙が接触時の熱移動に影響しているのではないかと考えられる
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