研究概要 |
本研究では、素材と皮膚との接触による双方の変化に着目し、スマートテキスタイル(特にナノファイバーマテリアル,毛羽のある材料)の表面特性の評価をおこなった。接触感を分析するにあたり、表面特性の異なる素材を対象に以下の3つのアプローチ,すなわち布の「しっとり感」「なめらかさ」「ぬめり感」の分析(2)ナノファイバー集合体の摩擦特性と接触感(3)パイルによる皮膚刺激となめらかさ、を物性値の測定と官能検査をあわせて実施した。 その結果、「しっとり感」では、手で触ったときに柔らかく、あたたかく感じる布に、より強い「しっとり感」があることがわかった。スマートテキスタイルの医療分野への応用を考えるため、シルクフィブロインとナイロン66をブレンドしたナノファイバーファブリックを作製し、表面特性を解析した。繊維を配向させ、繊維軸方向の摩擦係数、摩擦係数の平均偏差を測定したところ、ナイロンにシルクをブレンドすることで値はともに大きく減少した。またブレンドファブリックは、絹とほぼ同等の摩擦係数を示したことより、シルクライクな布が作製されたといえる。パイルの毛の長さを変えた試料に対する接触感では、毛が長くなるにつれてひとは弾力性を強く感じる。なめらかさは、毛が長い試料では毛が寝てくるため、違いはわかりにくい。球圧子を用いた圧縮試験の結果、圧縮エネルギーと弾力性の間に相関が見られた。またさらに毛先に加工を加えた試料についても同様の実験をおこなったところ、毛先の差よりも加工によりできた毛の束が触覚に与える影響が大きかった。以上のことから、「しっとり感」「ぬめり感」の分析と定量化、ナノファイバーマテリアルの表面特性解析を行い微妙な接触感覚の評価に用いる特性値の抽出と測定機器の構築を行うための基礎データを収集することができた。
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