研究概要 |
視覚情報は,フルカラーイメージの情報である.生活環境に存在する物体を正確に認識するには,物体の色や形,材質や表面特性などを工学的に測定する必要がある.また,照明や環境(空間)の認識,視対象における人間の知覚(視覚探索時間)など認知面からの追究が重要である.本研究は,視対象(立体形状)の視認性・誘目性(視覚情報)に影響をおよぼす空間的・時間的要因を検討し,生活用品の操作性向上に寄与する色彩情報の有効性や,日常生活をサポートする色彩環境の検証などを目的としている. JIS安全色彩に近似の赤(7.5R 4.0/11.2),黄(2.5Y 8.0/13.8),青(2.5PB 3.5/8.0)およびユニバーサルカラーの朱赤に対応した黄赤(6.3R 5.7/15.1)に調色した各色紙を用い,円柱(木製,直径:50mm,高さ:50mm)を被覆して立体刺激を作製した.視野角10°の光環境可変型検査装置にそれぞれ傾斜45°の台座にセットした基準刺激と移動刺激を被験者(19歳-23歳,学生)が観察する.基準刺激と移動刺激が同位置に並んだと被験者が認識した時点の刺激間の距離を視認誤差として求めた.また観察時の視線情報を眼球運動計測装置(アイマークレコーダ,nac EMR HM8B)により計測し,視線解析(nac EMR dFactory)を行なった.その結果,被験者は移動刺激が基準刺激以遠(-)にあるときに両刺激が同位置に見えると応答し,特に青が基準刺激の場合や移動刺激が赤,朱の場合にその傾向が顕著であった.視認誤差は基準刺激が青の場合に大きくなる.逆に青が移動刺激の場合には視認誤差が小さく基準刺激の色彩情報の影響が少ない.視線の停留点時間分析では,補色の関係にある青と黄の組み合わせで視線の停留が長くなる.視認性が低い刺激が移動する際,空間的・時間的要因を注視により補完することなどを示唆した.
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