本研究は、住宅の設計段階の間取りと入居後の空間使用の「乖離」(ずれ)の現状を捉え、その特性と背景を明らかにすることにより、実態に即した住宅プランを提言するための新たな計画課題を整理する事を目的としている。そのため、本年度は課題解明のために、居住者を対象とした2種の実態調査を実施した。 第一次調査では、多様なタイプの住宅に居住する層を対象に、プラン(住宅平面)と具体的住み方を採取する実態調査を実施し、246票の有効回収票を得た。その考察結果から、居住者の好みとしては「LDK」や「L+DK」志向が強いが、志向には住宅形式別に違いのあることが認められた。一般的に、戸建て住宅居住者には「L+DK」志向が、集合住宅居住者には「LDK」志向が強く、住宅の面積的要因の影響が把握出来た。また、プランと住み方の違いをみると、「LDK」タイプはプランより住み方で増加していて、実際の住生活ではDK室への団らん行為の組み込みが発生し易い傾向が確認できた。更に、居住者意識との関わりでは、家族の連帯感や住宅の開放性の意識がLDK構成のあり方に大きく関わっていることが示唆的に確認され、乖離の背景要因の解明に近づいた。 第二次調査では、住宅のプランが居住者の住生活特性に合わせて設定されている可能性の高い住宅、即ち住宅水準が比較的高く且つ築後年数の新しい住宅の居住者を対象に、住空間の使い方と住生活意識についてアンケート調査を実施し、485票の有効回収票を得た。この考察結果から、「LDK」や「LDK」のプランタイプでは、住み方の面でも同一の使い方になっているケースが圧倒的に多いが、これに対して「L+DK」や「L+D+K」のプランタイプでは、同一の住み方を行っている割合は大幅に低下していることが把握出来た。また、調査対象層はもともと、入居者の住生活要求に適合した住宅に入居出来たと想定される居住者であったが、入居初期の段階からプランと住み方の乖離は一定の割合で発生している事が把握できた。しかも、延べ床面積・部屋数共に高水準な住宅ほど乖離が発生しており、家族条件においても住生活行為の集約や多様化の発生し易い家族形態ほど乖離の発生確率の高いことも確認できた。このことは、これらの住宅では住生活改善型の乖離が生じていることを示唆しており、事実乖離層では住生活評価の高い層が多くみられ、乖離現象の新たな局面が確認できた。 尚、第一次調査の結果は、「第59回日本家政学会大会」(2007.5.11〜13)に研究発表として投稿済みであり、第二次調査の結果についても、初期に回収のできた241票分の考察概要は、「2007年日本建築学会大会」(2007.8.29〜31)に発表のための投稿を済ませてる。
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