本研究は前年度に引き続き、住宅の平面構成と実際の住み方におけるLDK空間利用の「乖離」(ずれ)の実態とその矛盾の背景を明らかにし、新たな住宅の平面構成理論の課題を整理する事を目的としている。前年度(平成18年度)の考察では、「改善型乖離」と「矛盾型乖離」の存在を指摘し、これが家族員数・団らん室面積・団らん室の持ち込み行為等に影響されていることを明らかにした。特に、これが団らん行為と接客行為の空間的処理に大きく影響していることを指摘した。平成19年度は、この成果を踏まえて2つの実態調査を実施した。第1次調査では、具体的な住み方実態の平面採種調査と居住者の意識調査を実施し、175票の有効回収票を得た。その結果、住み方実態における独立接客室の確立度は低く、住み方実態としての接客行為は多様な空間利用がなされていた。しかし、接客意識としては格式的来客の団らん室対応を回避しようとする傾向の強いことと、それが乖離誘発の主な要因にもなっていることを把握出来た。第2次時調査では、団らん機能と格式的接客機能とを両立させる空間についての提言を試み、居住者の評価をアンケート方式で調査し、232票の有効回収票を得た。実際の住み方での接客対応では、気の張る客を団らん室でもてなす事への強い抵抗感が認められた。この結果、接客行為を家族の団らん空間や私的空間から分離しようとする要求の高く、この現象が、LDKプランタイプにおける乖離現象に大きく影響していることが確認できた。ただ、試行的に提案した「団らん・接客両立型L空間」の肯定的評価は4割止まりで独立接客室確保の志向が強く、公私の心的隔離度が更に高い多機能型団らん空間確立の必要性が確認出来た。尚、両調査結果は「第30回日本家政学会関西支部研究発表会」(2008.10)と、「第61回日本家政学会大会」(2009.5)に発表を予定している。
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