洗浄性を評価するため、洗浄基質-固体粒子汚れ-洗浄媒体からなるモデル洗浄系を構築して洗浄実験を行った。洗浄基質には、水晶振動子(QCM)の金電極、金電極をポリエチレン(PE)膜で被覆した表面およびPE膜に紫外線照射して親水化した表面を用いた。粒子汚れには、カーボンブラック(CB)粒子、ポリスチレンラテックス(PSL)粒子を用い、粒径がそれぞれ260nm、200nmのものを使用した。洗浄媒体には、水にエタノールおよびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を添加した水溶液を用い、各水溶液中での粒子の洗浄性を調べた。次に洗浄に伴う自由エネルギー変化(ΔG)を見積もり洗浄結果との関係を調べた。 まず洗浄性評価のための最適実験条件を調べたところ、サブミクロン粒子の洗浄のための機械力には超音波洗浄(装置購入)が適当で、洗浄力(出力)は微弱で短時間、超音波音圧計(装置購入)による監視下での使用が必要であることがわかった。CB粒子の洗浄実験では、金基質ではエタノール濃度が増加しても脱離率に大きな変化はなかったが、PE基質ではエタノール濃度が高くなると脱離率が増大する傾向が認められた。SDS添加系では、両基質とも添加による脱離率の増大が認められた。親水化したPB基質では、洗浄性に顕著な傾向が認められなかった。PSL粒子では、両基質ともエタノール濃度が高くなると脱離率が減少する傾向が認められた。次に、洗浄液の表面張力、洗浄基質および粒子の表面自由エネルギーの各成分を測定してΔGを算出し、脱離率との関係を調べた。その結果、ΔGの値は全ての洗浄系で正の値となり、超音波が粒子除去の機械力となっていることがわかった。CB粒子のPE基質からの脱離率は、ΔGが増加すると脱離率が減少する傾向が認められたが、PSL粒子については今後さらに検討する。
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