固体粒子汚れのモデルとしてカーボンブラック(CB)粒子(0.26μm)を付着させた洗浄基質(高分子膜および布帛:人工汚染布)からのCB粒子の洗浄率を水晶振動子法および反射率法を用いてそれぞれ調べた。次に、ポリエチレン(PE・4μm)粒子およびCB粒子の洗浄のメカニズムについて検討を行った。 高分子膜には、スピンコート法により製膜したナイロン6、ジアセテート、トリアセテートの膜表面を用いた。布帛には、PE、ナイロン6、ジアセテート、トリアセテートの織物を用いた。機械力として超音波(5mV)を用いて、表面張力を変えるために水にエタノールを添加した混合液中で洗浄を行った。洗浄に伴う自由エネルギー変化(ΔG)および基質・粒子のぬれ力(γcosθ)を求めるため、粒子・基質の接触角(θ)および液体の表面自由エネルギ-(γ)をセシルドロップ法およびベンダントドロップ法によりそれぞれ測定した。分光光度計により透過率を測定した。 膜および汚染布からのCB粒子の洗浄率と洗浄液のエタノール濃度の関係について調べた。その結果、膜、布いずれの場合も、ナイロン、ジアセテート、トリアセテートの方が疎水性基質であるPEに較べて粒子は脱離しやすかった。また、布よりも膜の方が粒子の洗浄率が大きく、CB粒子の分散安定性が影響していることが分かった。高分子膜に較べて繊維は軟質で超音波の機械力が洗浄に有効に働かないことや布の構造が複雑であることも原因していると考えられる。エタノールの添加効果を見ると、膜では添加効果が認められた。ΔGと洗浄率との関係を調べたところ、ΔGが大きいほど洗浄率が減少する傾向が認められた。また、洗浄液のぬれ力と粒子(PE・CB)の洗浄率との関係を調べた。その結果、いずれの粒子もぬれ力が増大すると洗浄率が増大する傾向が認められ、高分子膜ではその傾向が著しく観察された。このことからぬれ力が粒子の洗浄に影響していることが確認された。
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