現在、住まいづくりに関する情報は、その量の多さ、専門性の高さのために、住まい手と専門家の間には理解や認識の格差が生じ、情報が十分に活かされていない状態にある。本研究では、住まい手の視点に立ち、住まいづくりのトラブルを防ぐことを目的とし、住情報および住情報提供組織の機能について検討を行うために、以下の調査を実施した。 1)建築相談のデータ分析:ボランティア団体によるインターネット建築相談の内容分析を行った。 2)住まい手への意識調査:東京建築士会青年委員会と協同で、住まい手を対象とした「理想の住まいづくり」に関する意識調査を行った。 3)住まい手への聞き取り調査:住まい手を対象に、住まいづくり経験を詳細に振り返るための座談会を開催し、聞き取り調査を行った。 4)国内の先進事例調査:国内先進事例を通し、住情報提供の方向性、住学習の可能性を検討した。 これより、住まいづくりの過程において、住まい手は依頼先の区別や違いの理解ができていないことを明らかにした。また、住まい手は住情報を入手しても、その情報が信頼できるものであるかを判断できない状況にあることを明らかにした。これらを解消する手段として、小規模な学習会を通した住まい手同士の経験の共有と第三者的立場である専門家との関わりが、その後の住まいづくりにおける依頼先(設計者、施工者等)との関係形成にも役立つことが示唆された。また、住情報提供機関については、先進的な取り組みを行っている各地の取り組み内容について、事例を調査し、今後の可能性と課題を整理することができた。
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