研究概要 |
吸水による紙おむつ内の衣服換気量(紙おむつ換気量)の変化をトレーサーガス測定法で検討し,吸水時の蒸発水分量と液体拡散面積から推定した換気必要量に基づく紙おむつ内環境の評価を試みた.排尿を模擬できる新生児,乳幼児,高齢者の等身大マネキンを使用し,着用した紙おむつに模擬尿の注水し(新生児用:10ml毎100mlまで,乳幼児用:50ml毎250mlまで,高齢者用:製品により125ml毎250または〜500mlまで),紙おむつ換気量および液体拡散面積を測定した.また,前年度に試行したカプセル換気法による蒸発量測定は測定条件により誤差が大きいことから,模擬尿を注水したサンプルを32℃・50%rh下で自然乾燥させて単位面積あたりの蒸発量を算出した. 新生児用,乳幼児用,高齢者用のいずれの製品においても紙おむつ換気量は吸水水分量の増加に伴って減少したが,その減少の程度は製品間で異なった.また,吸水時の液体拡散面積も製品間で異なった.吸水量の増加段階での液体拡散面積と紙おむつ換気量の対応関係には負の相関関係がみられる傾向だったが,その回帰直線の傾きは製品間で異なった.これらの結果から,紙おむつ換気量には主に液体拡散面積の増加に起因した減少が見られるが,着用時の液体拡倣面積や液体拡散面積の増加に対する紙おむつ換気量の減少率は素材の液体拡散特性以外の要因(例えば,デザインなど)にも影響されると考えられる.そこで,単位面積当たりの蒸発量と液体拡散面積から紙おむつ内に放散される水分量を算出し,それを外部に放散できる換気必要量を推定し,これに基づいて各製品の紙おむつ換気量を評価した.この衣服換気量/換気必要量比は,デザインや素材の異なる紙おむつ製品を総合的に評価でき,紙おむつ開発の有益な指標となりうるものと考えられる.
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