研究目的:今年度は、子育て終了後の中年後期(55歳から64歳まで)における「夫婦関係とパーソナル・ネットワーク」を成人子の状況や親の介護との関連で明らかにすることである。 研究の枠組:夫婦関係では、「配偶者はかけがえのない存在」などの4項目・4段階評価を行い夫婦の統合と得点を算出した。パーソナル・ネットワークは、別居親族・友人・近所・職場の人別に人数で尋ねた。成人子の状況は、性別、年齢、同別居、未既婚、経済的自立の状況、総合的に見て大人であるかどうかなどで把握し、介護については、介護経験、介護負担、介護サービスの活用状況などを尋ねた。 調査対象者と調査時期:55〜64歳までの女性とその配偶者を対象に、前橋市および高崎市の選挙人名簿からそれぞれ1500名(750組)、計3000名(1500組)を無作為抽出し、郵送にて計量調査を行った。調査時期は2006年11月中旬から12月上旬。回収数は805票、有劾回収数は797票(女性409票、男性388票)、有効回収率は26.5%であった。分析には、子どものいる768票(女性394票、男性374票)を用いた。妻の平均年齢は、59.2歳、夫は61.8歳。結婚期間は34.5年。妻は46.7%が無職、52.8%が有職、夫は23.6%が無職、76.9%が有職であった。家族形態は、夫婦のみ44.2%、夫婦のみを除く核家族32.7%。第1子の平均年齢は33.0歳で、未婚率は39.7%、同居率は27.5%であった。末子の平均年齢は29.3歳で、未婚率は53.5%、同居率は32.7%であった。 主要な分析結果: 子どもが全員未婚の場合、夫・妻ともに、夫婦の統合得点が低い。総合的に見て子どもが全員大人であると判断できる場合は、夫・妻ともに、夫婦の統合得点が高い。このことは、成人未婚子の状況が、中年後期の夫婦関係に影響を及ぼすことを示している。介護については、妻の場合、親の介護の有無と夫婦の統合得点は正の相関があり、介護経験のある方が夫婦の統合得点が高い。また、主たる介護者の経験がある場合、心理的負担を感じなかった方が夫婦の統合得点が高い。夫にはこうした関係は確認されなかった。パーソナル・ネットワークに関しては、夫の場合のみ、別居している子どもとのパーソナル・ネットワーク形成と夫婦の統合得点の間に正の相関があった。
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