研究概要 |
研究目的:平成18年度の計量調査で,インタビューに協力すると意思表示をした者のうち,夫婦の統合得点が高く多面的なパーソナル、ネットワークを形成している者,同居未婚子のいる者,子どもが全員他出しエンプティ、ネストになっている者,親の主たる介護をした者など,いくつかの特徴的なケースを選び出し(59名),郵送で面接調査を依頼した。うち面接可と回答した22名(男11名、女11名)に対して面接調査を実施した。エンプティ、ネストの夫婦関係は良好であることが計量調査より確認されているので,その理由を探るため,子どもの離家の経緯、大人としての自立教育、親役割の終了意識、今後の夫婦関係の見通し,親族関係や家族以外との関わりなどを尋ねた。また,介護経験のある者についても夫婦関係が良好であることが計量調査から確認されているので,その理由を探るため,介護時の状況、介護を引き受けたいきさつ、介護時のサポート態勢、介護の意味づけなどを尋ねた。 調査時期等:調査は2007年11月中旬から2008年1月中旬。調査時の会話は,対象者の許可を得て,ICレコーダーで録音し,調査終了後文章化した。調査時間は平均1時間半程度であった。 主要な分析結果:1)エンプティ、ネストの親は,子どもは離家して自立した生活を営むべきであるという明確な意識を持ち,さまざまな働きかけをしてきた。また,子どものためにしてあげる生活から自分のための生活へと切り替え,子育て終了後のライフステージの見通しをまって生活している。趣味を通した広いネットワークを形成している者もいる。子どもとの間の境界が明確で,子どもの離家により親子関係や夫婦関係が良好になったと実感している者が多い。2)親の介護経験のある者11名(男2名、女9名)のうち,夫婦関係のよくない者は1名のみでった。11名とも,要介護の親のQOLを考えながら,介護に当たっていた。家族が困難に直面し,それへのいろいろな対処が夫婦を統合させる効果を生み出している。
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