本研究の目的は、住宅購入が家計及び家族へ及ぼす影響を明らかにすることである。本年は、(1)住宅資産所有名義に関する統計調査の確認、ならびに(2)総務省「全国消費実態調査」を用い年齢階層別(30歳代、40歳代)住宅所有状況別家計収支の経時的変化の分析をおこなった。(1)住宅所有名義の調査の有無について、国勢調査、住宅統計調査(住宅・土地統計調査)、住宅需要実態調査を確認した結果、住宅・土地統計調査で1988年以降名義人が調査されているが、世帯内外の識別のみで世帯内の特定はなされていない。(2)1999、2004年の住宅所有状況別世帯数分布を2000、2005年の国勢調査と比較した結果、70歳未満の5歳刻み各年齢層において全国消費実態調査の方が高い。30〜34歳の住宅ローン返済世帯割合は1960年代前半生まれコーホート(C)以降上昇傾向にあり(60年代前半生まれC22%、70年代前半生まれC31%)、この10年で住宅購入年齢が早まりつつある。住宅ローン返済世帯の平均消費性向は低いが、消費支出に土地家屋借入金返済を加えた額で「修正平均消費性向」を求めると1984年以降のいずれの年もローン無し持ち家世帯、借家・借間世帯より高く家計の余裕度は低い(ただし、時系列では低下傾向にある)。しかし、消費面では、世帯人員数を考慮した等価支出額を比較した結果、住宅ローン返済世帯の値は年齢階層平均と同程度であり、費目別の支出を圧縮しているとはいえない。住宅ローン返済世帯の貯蓄額対年収比は1989年以降微増傾向にあるものの変化率は小さい。一方負債額対年収比は増加傾向にあり、1989年には30歳代1.5倍、40歳代1.1倍であったが2004年には30歳代では2倍、40歳代では3倍を超え、特に30歳代の負担は重い。
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