住宅の購入は生涯の中でも最も高価な買い物の1つであり、世帯・家族の状況は購入に影響を及ぼし、購入後長期間にわたるローン返済は家族の生活に影響を及ぼすと考えられる。本研究の目的は、住宅購入が家計及び家族へ及ぼす影響を明らかにすることである。本年は、同一対象者の継続調査を用い住宅取得状況と世帯・家族の属性の相違、変化を分析した。消費生活に関するパネル調査((財)家計経済研究所)の14年間(1993年から2006年)の調査を用い、初年から2006年調査まで有配偶で回答継続している調査対象者538人中、観察対象期商内の住宅変化として新規住宅購入(164)、買換(50)、持家継続(213)、借家継続(58)の485人を観察対象として抽出した。属性については主に初年と14年目の属性を取り上げ比較を行った。結果は以下の通りである。居住地域では持家継続は町村割合が相対的に高いが、購入者と借家継続間では相違はない。購入者、持家継続、借家継続間の妻年齢について、持家継続は購入者に比べ高いが、購入者と借家継続間では差があるとはいえない。この3者の妻の結婚年齢にも差は見られなかった。住宅変化により家族構成は異なっており、持家継続では親との同居割合が高く、借家継続では親等との同居は極めて低い。2006年の平均子ども数は2.1から2.3人で住宅変化による相違はない。夫学歴には居住変化と線形的な関係がみられるが、妻学歴にはみられない。初年の妻の就業状況について、持家継続と買換では約半数が就業しているが他の2つでは約25%と低い。2006年にはいずれの住宅変化でも就業化し60%台の就業率である。初年にはともに借家居住の新規購入と借家継続の妻の就業状況はほぼ同様の変化である。妻の就業化と住宅購入との関連について、本分析からは妻の就業が住宅購入を促進した、また、住宅購入が妻の就業を促進した、とはいえない。
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